日本アントロポゾフイー医学の医師会より
新型コロナウイルス感染症パンデミックに関して
http://j-paam.org/statements/about_covid-19_pandemic
はじめに、世界中、日本中の新型コロナウイルス感染症で苦しんでおられる方々に、心よりお見舞い申し上げます。また同時に、最前線で日々奮闘されている同僚の医療従事者のみなさまに心からの敬意と感謝を申し上げます。
私たち日本アントロポゾフィー医学の医師会は、今回の新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に関して、世界中の科学者が知見を集め、医療崩壊を防ぎ、少しでも多くの命を救うべく努力を続けていることを全面的に支持します。
また、各国の政府が、医療関係者と協力し、経済的な困窮により人々が健康を害することがないように注力し続けることを要望します。
そして市民のみなさんへ。
みなさん自身とみなさんの大切な人を守るために、ウイルス感染の予防に努力しましょう。
日常的な石鹸による手洗い、人混みを避ける、密閉された環境を避ける、近距離での会話やボディタッチ(密接)を避けるなどの、基本的な新型コロナウイルス感染症予防方法を行っていただくようお願い申し上げます。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見や海外での状況を、どうぞ、全ての人々が真剣に受け止め、しばらくの間家に留まるようにしてほしいと思います。
今世界の情勢を見ると誰もが恐怖を感じます。恐れを感じながらも、客観的な情報をもとに危機感を持って対応したいと思います。外側から襲ってくる恐怖と私たちの内側にある不安が過剰になると、より困難な状況を作り出すかもしれません。親しい方々と気持ちを共有する、必要な対策を淡々と行う、日常生活を大切に送るなどによって、過度な不安に囚われないようにしたいものです。
それだけでなく、健康生成的な側面についてもこの機会にぜひ考えたいと思います。睡眠も含めた生活リズムを整えることは重要です。人の少ない屋外での散歩はあなたの体調を整え気分転換にもなります(許されている時期であれば)。1日の始めと終わりに、自らの内なる静寂と熱を確認する時間を持つことは身体と魂を強めてくれることでしょう。また、活動を自粛し時間が生まれたら、散歩で見つけた季節の草花をスケッチしたり、あなたの大事な遠くに住む家族や友人に手紙を書いてみることも新鮮な喜びとなるでしょう。人との直接の接触を避ける必要がある今、意識的な温かいつながりを大事にしましょう。私たちは身体だけの存在ではないこと、意識・心の広がりには限界がないことを、今こそ実感できると思います。遠方の人へ温かな思いを寄せることは可能です。インターネットやデジタル機器の利用は、この時期には補いとして避けられないことです。その際、計画された集まりをただ単にオンラインに置き換えるというのではなく、本当にその集まりが私たちに必要であるから手段としてインターネットやデジタル機器を人間的に使うということを意識していただきたいと思います。
私たちアントロポゾフイー医学には、健康生成的な芸術療法、オイリュトミー療法、薬物療法、看護などがあります。関心をお持ちの方はお問い合わせください。
歴史的に、このような感染症・疫病の流行時には流言が飛び交うことが証明されています。また流言ではなくても極端な論説が広がることもあります。そのような時に忘れたくないのは、私たちの現代社会はそもそも様々な形で人間の健康を損なう可能性のあるものに満ちているということです。環境汚染、化学物質、食料品汚染や食料の非生命化、電磁波など。またメディアやSNSへの依存、経済的な格差も健康を妨げます。新型コロナウイルスに対抗できる治療薬がない現在、私たちの免疫を損なわない生活は重要で、これら健康を損なうものから身を守ることも重要です。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症をどれか一つの問題に単純化するようなことがあれば、それこそ唯物主義的に健康問題を考えていると言えます。完全な人間が存在しないのと同じように、完全な世界は存在せず、だからこそ私たち一人一人ができることを自分で考え行っていくことに意味があるのです。
私たちは、通常医学を拡張する統合的な医療を行う医療者として、このような時にこそ公共の衛生を重視しながらも個人を尊重し、一人一人の健康を支えるためにみなさんとともにありたいと思います。
このような観点を求める方々に、この文章が届き、少しでも役に立つことができれば幸いです。
2020年4月6日
日本アントロポゾフイー医学の医師会